第14章 冒険に行こう
エレベーターを乗るにも並んだが、話していればあっという間だった
展望台は京都の町並みを360度みることができ、夕暮れ時の今、空がオレンジから深い青色に変わっていっている
混ざりあう部分がなんとも言えず、目が離せない
「名前」
『わ、なんか、綺麗で見とれちゃった』
「…そうだね」
赤司の視界に藍色の髪をした苗字が映る
彼の中では未だ見慣れない彼女に「向こう見に行こう」と声をかけ、2人並んで景色を眺める
『あれ清水寺かな』
「案内板の通りだとそうじゃないか」
『暑かったし、人凄かったね』
「夏休みだからね」
夕日がこちらを見る彼の右目をオレンジ色に染める。それがなんだか懐かしい気がして苗字が赤司に手を伸ばす
彼の頬に指が触れたとき、無意識に伸ばしていた手を引っ込めた
『ご、ごめんね。無意識に手が動いちゃって』
「いや、驚いただけだ。気にしないでくれ」
『本当にごめんね…なんか、赤司君の顔見たら手が動いちゃった』
「顔を見て?」
『夕日のせいで片目がオレンジ色に見えたんだ。それ見たらなんか、手が勝手に…』
赤司は驚いた。彼女は高校生のとき赤司の片目がオレンジ色だったことを話した覚えは無いから知らないはず
それを懐かしいと思ってくれたのではないかと思い、息すらも忘れて止まってしまった
『赤司君?そんなにびっくりさせちゃったかな、ごめんね』
「ああ、オレも無意識のうち、時が止まっていた」
『何それ、赤司君も冗談言うんだね』
いや、いるはずだ。昨日見た彼女は夢ではなかった
隣で笑う彼女のことも夕日がオレンジ色に照らす。戻ってきてくれただけでも十分だが、どうしても望んでしまう
「一周したら、降りようか」
『うん。そうしよ』
そこから一周展望台を周り、彼らは展望台を後にする
外が段々と暗くなり始めていて、降りる頃には空の半分が深い青色に染まっていた