第14章 冒険に行こう
清水寺から坂道を下ると気温がピークを超えた頃、昼ごはんもかねて休憩することにした
大通り沿いは混んでいたので大通りから逸れたお店に入店すると、汗ばんだ肌に涼しい空気が服の間を通り抜けて外の暑さを忘れさせる
案内された席に座ると、近くの席に座っている若い女性が赤司を見てコソコソと嬉しそうに話をしている
『赤司君、すごいね』
「何の話だい」
『なんでも?』
何も考えず出てしまった言葉を誤魔化しつつメニューを開き、わざとらしく「どれにしようかなー」なんて口に出す
何を食べるかはお互いすぐ決まったため、冷えた水を飲んでふぅと溜め息を吐いた
「疲れてないかい?」
『疲れてないって言ったら嘘になるけど、元気だよ』
「連れ回してしまってすまないね」
『ううん、私の方が案内してもらってばかりで申し訳ないよ』
「オレのことは気にしなくていいよ」
店内は混んでいたが、他愛ない話をしていると料理はすぐに運ばれてきた
赤司の食べ方の所作が綺麗で、彼の生まれと育ちを思い出した
他のみんなと違い小学生からの仲だと聞いていたが、どうして仲良くなったのだろうと疑問に思う
手を止めているのが気になった赤司は箸を置いて彼女に話しかける
「この後どっか行きたいところはあるかい?」
『うーん、お土産買いたいくらいかな』
「そうしたら坂の途中にもお土産が売っているから、見ながら下っていこうか」
『うん。駅とかにもあるよね?めぼしいものがなければ駅で買おうかな』
「そうしたら駅に向かおう」
『あれ?荷物は?赤司君の別邸に置きっぱなしだよ?』
「まとめて送ってあるよ」
『さすが赤司君…』
相変わらずの仕事の速さに苗字は心の中で拍手を送る
先程考えていた疑問を忘れ、再び食事のため手を動かす
美味しそうに食べる苗字を見て、赤司は嬉しそうにしながら箸を進めた