第3章 ボクらの記憶
それからまた何日か後、花束を持った赤司が苗字の病室に夕方やってきた
どんどん増えていく花に比例して花瓶も数が増えていき、赤司は花瓶の水を変える量が増えていき少し苦笑いを浮かべていたが苦痛には思っていないようだった
恒例のそれを終え、彼が手をタオルで拭いて彼女の近くにある椅子に座った
今日の彼女は仰向けで寝ていて、彼はそれも恒例なのかゆっくりと唇を重ね合わせた
そして彼女を起こさないように抱きしめた彼は夕日に照らされて少しオレンジ色に見える彼女の髪を撫で、笑った
「…お前には、オレンジの方がよく似合うな」
赤司がそう言いながら彼女から離れて手を握ると、苗字の目尻から水が伝った
そんな彼女の様子を見た赤司は目を見開いて、ガタッと音を立てて椅子を倒して立ち上がった
「名前、お前…」
彼がそのまま彼女の顔を見ていると、彼女はいつも寝ている表情となんら変わらず涙だけ流しており、ある程度彼女が涙を流すと色のついた涙が伝い始めた
最初に紫、次に青、緑、黄色、ピンクに水色を流した彼女は最後に鮮やかな赤色の涙を流した
それは絵の具を使った筆を水で洗ったような色のつき方で、枕元が汚れているのではないかと赤司が確認するとただ水で濡れているだけだった
「色のついた…涙…」
それを赤司が疑問に思い精一杯頭を回転させていると、彼女はゆっくりと透け始め、彼をまた驚かせた
確認した赤司はすぐにキセキの世代と黒子と桃井、火神のグループに連絡を入れ、すぐに来るよう指示を出した
「…もう少し待ってくれ」
そう言った赤司はふと中学の時保健室で彼女が消えかけた事を思い出し、再び彼女を抱きしめて「大丈夫だ」と言って苗字の事をあやすように優しく叩いた