第3章 ボクらの記憶
「久しぶりに会えたというのに寝たままなんて、ずるいな」
そう赤司がポツリ呟くも彼女は何も反応せず、誰かが向きを変えたのかドアの方を向くようにして、右肩を下にするように横になって寝ていた
しかしながら腕に負担が掛からないようになっている辺り変えたとしたら緑間かこの病院の職員の誰かだろうと推測した彼は彼女の顔に掛かっている髪を耳にかけ、ゆっくりと彼女の顔に自身の顔を近付けて、唇を重ねた
「…花に囲まれている所が眠り姫みたいだが…キスしても起きないなんて、どうすればいいんだろうね」
彼女に「どうすればいい?」と問いかけるもやはり反応しない彼女に赤司は溜め息を吐いた
そして苗字の髪を手に取り手グシを始めた
だけれども彼女の髪は元々サラサラであるためそこまで必要のないそれは赤司にとって楽しいのか、口元に微笑みを浮かべながら続けた
「そう言えば、昨日父から「橙崎の娘はどうだ」と聞かれたよ。なんだかんだで心配していてね…状況を説明したら少し私用を減らしてくれたんだ」
彼は来る度に報告のようなものを彼女の髪をとかしながらする
それをやっている際に人が入ってくることがあるが、それを彼は気にせず快く迎え入れ、彼女に変わっていつも「ありがとう」とお礼を言うのだ
それからおよそ1時間後、時間がそれほど経った赤司は名残惜しそうに彼女の髪を離し、彼女の頬に触れた
「じゃあ名前…また明日」
荷物を持った赤司はゆっくりと、悲しげに表情を変えながら彼女の病室から出て行った
このまま彼女が目覚めなかったらどうなるのだろう。と考えた赤司はすぐにその考えを捨てて「1日でも早く目覚めることを祈ろう」と思ってエレベーターの下の階のボタンを押した