第14章 冒険に行こう
外はとんでもなく暑く、人が凄かった
日傘が日光をある程度遮断してくれているにも関わらず貫いてくる熱気で溶けてしまいそうになりながら、人が往来する坂を見る
この先に待っているのは、清水寺
『すごい人と、坂だねえ…』
「そうだね」
そう言いながら赤司が少し楽しそうに人混みを見つめていふ
何かと思って彼の目線の先を見ていると、前を見ながら話し始めた
「中学の修学旅行でも清水寺に来たんだ。皆同じ班になってね」
『皆って…みんな?』
「帝光中の灰崎を除くメンバーかな」
『大変そうなメンバーだね…』
今はだいぶ統率が取れているように思えるが、中学生の頃は大変だったんだろうと同情してしまう
そもそもそのメンバーが揃ったことが驚きだ
「その時この坂嫌がっていたな皆が」
『そりゃ嫌だよねこんな坂、暑いし』
「ここまで暑くはなかったが、名前がこの坂を走る冗談を言ってたなと思い出してね」
『なかなかのジョークだね私…』
立ち止まってしまえば二度と前に進めなくなりそうで、気を紛らわせるために赤司と苗字で会話をする
だがその余裕も段々となくなって、息を切らしながら坂を登りきった
『やっと着いた…』
「お疲れ様」
『赤司君全然疲れてないね』
「そんなことないが、一応日頃から運動しているからね」
『一休みしてから参拝行こ。わ、すごい人だ』
周りを見ると老若男女国籍問わず、たくさんの人がいる
こんな混むところに来たいだなんて申し訳ないことを言ってしまったと反省していると、目の前にペットボトルのお茶が差し出された
「飲み物飲むかい?下で買っておいたんだ」
『わ、ありがとう。お代は』
「お茶くらいいいよ」
『…後で払うからね』
あとで送金するかなにか奢ろうと決心し、ペットボトルの蓋をひねる
暑さと上り坂に疲れた身体に冷たいお茶が染み渡り、生き返ったような気分の彼女を赤司が見ていた
「迷子になったら困るからはぐれないように」
『…人、多いからね』
坂より混んでいるこの場所で迷子になったら赤司に迷惑かけることは間違いない
流石に理解している苗字は彼との距離を少し詰めて「よろしくお願いします」と口にする
赤司は笑いながら「案内するよ」と足を進めた