第14章 冒険に行こう
苗字の荷解きが終わった頃に赤司に呼ばれ夕飯を共にし、疲れただろうから風呂に入れと促されて気づけば彼女は広い湯船に浸かっていた
『疲れたなぁ…』
口から無意識に出てしまった言葉は本音だったが、もちろん楽しかった
ルーズリーフを買うところからこんな京都まで来てしまうとは、誰が予想していただろうか
ふと1人脳裏に浮かんだ人がいた
『…黛さん』
彼の言っていることだけが不思議だった。何だったのだろうとボーッと考えると、意識がだんどん遠くなっていく
やばいこのままでは寝ると危険を感じ、急いで湯船から上がる
流石に宿泊先の風呂で寝て出てこないとか心配されたら困ってしまうし、赤司にも迷惑だ
おそらく新品のバスタオルをありがたく使わせてもらい、来客用であろうパジャマに袖を通し、今まで来ていたものを半透明な袋にいれる
こういう気が利くものが入ってるということは、詰めてくれたのは雪さんかなと考えていると手が止まっていた
『はっ、やばい』
予想以上に体疲れているようで、頭がぼーっとする
だが寝る訳には行かないと、鏡の前で入浴後の顔の保湿とドライヤーを半分寝ながらこなしていく
しかしながら睡魔にはどうしても勝てなくて、ドライヤーを同じ場所に当て熱くなった事で目が覚めるという行為を何度か繰り返す
『諦めよう、無理だ』
毛先の方が乾いてないが致し方ない。言い訳を自分に言い聞かせドライヤーをしまい部屋を出る
自分の部屋に行こうと歩いていると、洋間に赤司がソファに座って本を読んでいた
苗字がいることに気づいたのか本をとじて、こちらに向かってくる
「大丈夫かい?なかなか出てこないようだから心配で」
『ごめん赤司君…眠、くて…』
「名前!」
彼の姿を見た瞬間、苗字は強烈な眠気に襲われた
先程の非ではないそれは立っていられないほどで、駆け寄った赤司が支えてくれなければすごい勢いで倒れていただろう
「名前、大丈夫か」
声をかけたが反応がなく心配になったが、規則的に聞こえる呼吸に寝ているだけだとわかり胸を撫で下ろした