第13章 夏祭り 後編
と言いたいところだったが、高尾の声にびっくりした苗字が肩を揺らしてしまい玉を落としてしまう
残念そうに、輝きを失ったそれを見つめている
『あぁ、落ちちゃった』
「今のは高尾っちが悪いっスね」
『大丈夫、負けなかったから』
「はーい…オレがちゃんとみんなの分買うっスよー」
残っているのは赤司と黒子。もうどちらとも花火のピークは迎え終わっているようでどちらが先に終わるかが勝負と分かれ目に見える
中々つかない2人の勝負に、桃井が「あ」と小さく声を出した
「そういえばこの賭け、2年生の時にもやったよね」
「覚えてるっス!中2の時のやつ!」
「あん時も黄瀬が負けたんだよな」
「違うっス!青峰っちが負けたんスよ!
皆にゴリゴリ君奢ってたじゃないスか!」
「覚えてねぇなぁ」
「えー、覚えてるっスよね紫原っち」
「ん~?買ってもらったことしか覚えてない」
「もー緑間っち!」
「うるさいぞ黄瀬」
流石に黄瀬も空気を読んだのか、残っている赤司と黒子に声はかけない
だんだん弱くなっていく光が先に消えたのは、黒子の線香花火だった
「あ、消えちゃいました」
「じゃあオレの勝ちかな」
「…やっぱり赤司君ですね」
予想通りの結果にそれぞれがバケツに消えた花火を入れていく
この空間に少し残る煙たい匂いも、この賭けも、彼女の頭を痛くさせる
それを悟られないように花火の後片付けをして、彼らは公園から去っていった
その後黄瀬がコンビニでアイスだけでお札が3枚飛んでいったのは彼らの思い出兼、笑い話となった