第3章 ボクらの記憶
そんな彼らに沈黙が走ると、黒子はハッとしたように目を見開いてから「少し、良いですか」と言って彼らの視線を集めて話を始めた
「ボク、名前さんと少し話しました」
「!?」
「すぐ気を失ったわけじゃなかったのか…!?」
「…気を失っている所、ボクが名前さんを揺すってしまって…」
「何をしているのだよ黒子」
「わかっています。最後まで話を聞いてください
そしたら名前さんがうっすら目を開いて、ボクの名前を呼んだんです」
「テツ君って、わかったんだ…!」
「恐らく。それから力なく笑って、手を伸ばしてボクの頬に触れて、「君達のことまた手伝って」と言ってから、彼女は目を閉じて、手を地面に落としたんです」
「死亡フラグだな」
「やめろ青峰縁起でもない」
青峰の言葉にいち早くツッコミを入れた赤司は呆れたように溜め息を吐き、その隣にいる黒子はその情景を思い出して重荷を持ったような感覚になりながら、息を吸って、吐いた
「そんな時にまでオレらのことを考える辺り名前ちんらしいよねー」
「そういえば、全中決勝の時黒子っち庇った事もあったっスよね」
「全中どころか霧崎第一戦もですよ」
「あー…黒子が引っ張らなかったらあの時確実に苗字殴られてたな」
「そう言えば、ハサミ持ってる赤司前に反論しに行った事もあったのだよ」
「あん時オレ超ビビった…ハサミブン回すわ髪切るわ、苗字の髪切るわ」
「ああ…あの時は済まなかったね」
「…そういや、Jabberwock戦の時はテツ助けに先に六本木行ったしな」
「あの時は何も言わず出て行った黒子が悪いのだよ」
「ボクは悪くありません」
笑顔で思い出話をするキセキの世代を周りに桃井は嬉しそうに笑ってから苗字のベッドの隣にある椅子に座り、彼女の手を握った
「名前ちゃん…みんな、思い出したんだよ。だから早く…起きて?」
そう桃井が彼女に問いかけるも返事は無く、ただただ寝息を立てていた
彼女が起きる気配は全く感じられなかったが、世界はゆっくりと、回り始めていた