第11章 溶けていくもの
『今日火神君のバスケが見たいって言ったのは私だよ?』
「けどよ…」
『実は、ちょっと早いんだけど…』
苗字はバックの中から先程ショッピングモールで買ったキーケースをラッピン袋ごと取り出す
差し出された火神は受け取って、苗字を見た
『火神君もうすぐ誕生日だから、一緒に選んでもらったの』
「…苗字」
『何が欲しいか色々考えたんだけどね!
火神君何が欲しいかわかんなくて…バッシュとかもサイズないし…だから…趣味に合わなかったら…ごめん…』
言い訳のような言葉しか出てこなくて苗字が恥ずかしそうに、真っ赤になりながら俯く
そんな彼女を見て火神も照れくさそうに頬がほんのり赤くなる
照れを誤魔化すように、ラッピング袋を開いた
「キーケースか?」
『家の鍵ケースに入れて無さそうだし、それ小銭とかカードとかも入ってね、火神君っぽい、色だと、思って…』
「…サンキュ」
『ううん!誕生日プレゼントだから!気にしないで!!』
耳まで真っ赤に染める苗字の頭をくしゃっと火神が撫でる
喜んでもらえたことか、撫でられたことが嬉しいのか、彼女の口角が緩んでいた
そんな彼女を見て火神は照れくさいのかスタスタと先を進んでしまうので、小走りで追いかけた
『夏祭り楽しみだなぁ』
「美味いもん沢山あるぞ」
『火神君は食べ物ばっかだなぁ』
「花火もキレーだったけどな」
『本当に思ってる?』
花より団子なのではないかと苗字が口元に手を添えて笑っている
当の火神は反論も出来ずやれやれとした顔をしていた
「ま、当日迎え行くな」
『うん!待ってるね!』
火神の迎えに行くという言葉に苗字が満面の笑みを浮かべる
そんな笑顔の苗字を見て、火神も笑った
当日何時に迎えに行くかなど、夏祭りの話をしながら2人は帰路を歩いていく
その影は細長く、くっついていた