第11章 溶けていくもの
帰路、オレンジ色に染まる空の下を4人で歩く
青峰は荷物持ちの役割を忘れていなかったのか、押し付けられたのか桃井が買ったショッピングバッグを手に持っている
『やー、楽しかった!』
「よかったぁ!次は夏祭りかな?」
『そうだね!さつきちゃんの選んでくれた髪飾りつけてくね』
きゃっきゃと夏祭りの話を膨らませていると、桃井の自宅と苗字の自宅へ別れる交差点にあっという間に着いてしまう
「ちゃんと送ってけよ」
「頼むよかがみん!」
「わーってるよ!」
『あ、ありがとう』
通さがる2人に「じゃあねー」と手を振って、姿が小さくなったところで苗字の歩調に合わせて歩き出す
苗字は機嫌がいいのか鼻歌を歌っているが、2人の間に会話はない
ただ火神がなにか話したそうに口を開けては閉じを繰り返している
後頭部をポリポリとかいて、意を決したのか急に立ち止まり口を開いた
「夏祭り、迎え行く!」
ようやく出た言葉に苗字は目をまん丸くする
急に言われたのもそうだが、声の大きさも、火神の赤くなっいる頬にも驚いた
『嬉しいけど、気持ちだけで…』
「あーー行くって言ってんだ!待っとけよ!!」
『……何か、心境の変化が?』
いつもと様子の違う彼に苗字が不思議そうな顔をする
一般から見ると積極的ではないが、こんなにバスケ以外のことで決めつける火神は中々見ないものだ
図星なのか、彼は少し照れくさそうに頬をかきながら口を開く
「…バスケばっかでろくに、で、デートできてねぇんじゃねぇかってタツヤから言われて…」
『それで今日呼んでくれたんだ?』
「結局バスケしちまったし…桃井と2人にしちまって…すまねぇ!」
頭を下げる火神に苗字がくすくすと笑う