第11章 溶けていくもの
突っ立ってるのもなんだと、火神と青峰が桃井の言う通りスポーツショップに向かう
もちろん会話がない訳では無いが、青峰が話を切り出した
「苗字はどうだ」
「あぁ?なんもねぇよ」
「この間黄瀬がちょっと思い出したみたいなこと言ってたから、気になってよ」
「あぁ、あれか」
思い出したというか正確には彼女は見たと言っていた。その思い出した場面に自分はいなかったため黒子と黄瀬に聞いたところ、丁度そのような状況だったとのこと
何が引き金だったのか、彼女も分からないためそれ以上触れられることは無かった
「まあ、オレたちが思い出したのも最初はよく分かんなかったもんな」
「…そーだな」
火神はなんとなくため息を吐いてオレンジ色の髪の彼女を思い出した
一方目的であった浴衣の購入が完了した苗字と桃井はフロアガイドを見つめている
「かがみんの欲しいものかぁ、」
『チーズバーガーとバスケしか出てこないよ…』
「かがみんサーフィンとかも好きだけどね」
『サーフボード…!?』
今日ここまでの火神とのやり取りを思い出してみるが、ホットケーキ作りとバスケしかしてないし、食べたものはマジバのチーズバーガーである
頭を抱えていると、ふと苗字が思い出す
『…そういえば火神君、家の鍵ケースとかに入れてなかったかも』
「そうだよ!さっきも家出る時入れてる素振りなかったよ!」
『じゃあ…キーケースが売ってそうなお店を…』
とりあえずフロアガイドを見て1番大きい敷地と言って過言でもない雑貨専門店に向かう
「どう?いいのある?」
『…どれも同じに見える』
「とりあえず色から決めよう!」
茶色や深みがある黄色の革素材、はたまたキャラクターものなど色々なものを見ていく
『あ』
ふと目に止まったものがあった
黒の革素材の3つ折り、内側のみえんじ色の革素材が使われている
そのえんじ色が、彼の髪を彷彿させる
なんとなく引かれてよく見てみるとキーケースだけでなく、コインケースにもパスケースにもなるというものだった
「これが気になるの?」
『なんか、火神君みたいな感じがする』
「うーん、色?かな?」
とりあえず、と思ってほかのも、他のお店も見て回ってみるが心に残ったのはその黒とえんじ色のものだった