第11章 溶けていくもの
ストバスコートに着くと、火神と青峰がいきなり1on1を始める
『あの2人は本当にバスケが好きだね』
「とりあえずあの決着がつくまで待っていようか」
「だぁぁぁっ!!!もう1回だ!!」
「決着着いたみたーい」
早すぎる決着だが、またすぐ始める
その様子にまた懐かしさを感じる。たまに感じる、いつもと一緒の感覚
何回やってもなかなか青峰に火神が勝てなくて、悔しそうになる姿。これを苗字自身初めて見るわけじゃないが、何か別のなにかが彼女の視界チラチラする
「タイガ!オレも混ぜてくれ!」
「…オレも~」
紫原と氷室の合流と同時にパッと、チラチラしていた何が消える
様子がおかしい名前に、桃井が不安そうな表情を見せていた
「名前ちゃん、大丈夫?」
『大丈夫、視界がチカチカ?してて…
ちょっと日差しが強いのかな?』
「屋内行く?」
『ううん、もう治ったから大丈夫』
「無理しないでね?」
心配そうな表情をする桃井に苗字はありがとうと言って笑いかける
「そういえばもうすく夏祭りだね!」
『うん、楽しみ!屋台とか何があるんだろう』
「むっくんがねぇ、いつもたくさん買って食べるんだー」
『なんかそれは想像通りというか…』
目線の先にいる紫原は火神相手にディフェンスをしている
4人でチームを回しているようで、紫原と火神が同じチームになることもある
ハイレベルすぎて着いていけなさそうなのだけはよく分かる
「そう言えば4人で何してたの?」
『火神君から氷室さん紹介したいって連絡来て行ったら紫原君も居て、気づいたらこうなってた』
「氷室さんとお話したの?」
『ちょっと?みんなの中にはいないタイプだよね』
「フェミニストって言うのかなぁ、きーちゃんより大人の女性に人気がありそうだよね」
他愛ない話で盛り上がっていたが、気づくと太陽が高い位置に移動してきて、座って話してるのもちょっと…という天気になってきた
さすがに桃井が見かねて「そろそろ熱中症になっちゃうよー」と声をかけると、彼らの動きがピタリと止まった