第11章 溶けていくもの
『火神君、手伝っていい?』
「いいよ座っとけって」
『私もなんか食べたいから』
「お前もかよ…」
戸棚を開けた火神はさっとホットケーキミックスを取りだした
それを見てそういえば入院してる頃、クッキーはホットケーキミックスで簡単に作れると言っていたのを苗字は思い出す
「ホットケーキでいいか紫原」
「ふわふわのにしてね~」
「難しいこと言うな!!」
『レモン汁とマヨネーズ入れるといいんだよ』
「不味そう」
『そんなことないよ』
卵と牛乳を用意する火神の横からちょこちょこ手を出して、マヨネーズとレモン汁を入れると紫原の顔が少し歪む
そんな顔を見て軽く笑って宥めていた
『高いところから落とすといいんだよ』
「おう、それは知ってる」
『さすがだね』
あとはもうお手の物と、手際よくひっくり返して盛り付けしと言った感じで気づいたら出来上がっていた
火神が買った訳では無いのだが気づいたらあったメープルシロップと共に紫原の元に置くと彼は凝視する
「もっとふわふわなの期待してたんだけど~」
『そうなるとメレンゲからだね』
「そこまで求めんなら自分でやれ」
「そうだぞアツシ、文句言うなら自分からやらなきゃ」
「んー…うん、おいしー」
なだかんだで紫原の分だけでなくそれぞれ1枚ぶんはあるためそれをそれぞれ前に食べ始める。大学生の休みとは思えないくらいほのぼのとした風景である
「はー美味しかった」
「相変わらず食べるの早いねアツシは」
「ま~ね~」
「苗字それもう食わねぇのか?」
『うーん、無理すれば食べれなくはないけど…』
「食ってやろうか」
『え?あ、うん?』
疑問的な意味で返事したのだが普通に食べ始めた火神を見て彼女は顔を赤くする
そんな苗字の表情には気づかずに火神は残り少ないホットケーキを食べ進めていた