第5章 ~CHITOSE SENRI~
千歳が好きだと伝えてくれた
でも私は好きだと伝えなかった
何も返事をしない私に千歳は何も言ってこなかった
私はずるい
2人で会う度にキスしたりするのに
千歳を受け入れるのに
私は好きというのがよく分からなかった
ただ千歳の真っ直ぐな思いに甘えてそのままにしている
私はずるい
そんな中、全国大会やらで私の頭からはそんなずるさは消えていった
――――――
大会も終わり、部活を引退した私達は送る会に出席すると、花束を持ったまま屋上に上がってきていた
屋上から部室の方を覗いてみると、蔵や謙也がいるのが見えた
「千歳、蔵達がいるよ」
「せやね」
「あっ皆もいる!引退したのに皆好きだね~」
「ん....」
何を話しかけても短い返事しかしない千歳に私は少しからかおうとする
「そういえば聞いた話なんだけどね、千歳って前の学校で結構やんちゃだったらしいね?女の子とっかえひっかえ~って」
「え?でも今はそなこつしとらんよ」
(あ、認めるんだ...)
私は拍子抜けしながらも笑みを返した
「は...そんなヤツ好かん?」
「え?でも過去なんでしょ?別に気にならないけど...」
そう言いながら私は蔵達を眺める
「白石...や謙也くん、財前がんこつ好きなん知っとる?」
その言葉に一度、千歳に視線を向けるもすぐに視線を戻した
「.....そうだね...」
千歳との一件以来、他人の気持ちにはそれなりに敏感になった
それが自分に向けられたものならなおさら
(いつも傍にいたんだもん、あの視線が...)
こっちを、私を見ていたのに気付くのは当たり前だった
(今思うと半年以上もスルーし続けた私も中々...)
「良かったと?」
自己嫌悪に落ちていたが、千歳の言葉に視線を向けた
「千歳?」
「それで本当に良かと?」
その千歳の言葉に私は漸く向き直った