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ハリー・ポッターと小さな召喚士

第9章 【予想外】


 例のニヤリと口端だけを上げる笑みを浮かべると、ハリーはクリスを誘った事を少し後悔した。
 だが自分から声をかけておいて今さら断るなんて事もできず、朝食代わりの濃いミルクティーを飲むクリスを見ながら、ハリーはどうにかハグリッドの前で失礼な事をさせないようにするか頭を働かせなければならなかった。
 さっきの言葉がただの冗談だという可能性もあるがクリス、のことだ。何をするかいまいち予想が付かない。

「午後からお茶会か。――そういえば、今日の授業は何だっけ?」
「今日はたしか魔法史と……そうだ、魔法薬学だ」

 眠そうにあくびをしながら尋ねたクリスに、さっきとはがらりと表情を変え暗い顔をしたロンが答えた。ロンの顔には、確かに不穏な影が落ちている。

「どうした、ロン。食べ過ぎて腹痛か?」
「違うよ。フレッドから聞いたんだけどさ、どうもこの魔法薬学の授業ってのが最悪らしいんだ。教師は自分の寮生ばっかり贔屓するし、意地の悪い質問ばっかりするし。おまけにスリザリンとの合同授業だってさ」
「スリザリンか……確かにそれは厄介だな」

 贔屓や授業内容よりも、クリスとしてはスリザリンとの合同授業という方が頭痛の種になる。入学式からこれまで、廊下や大広間で目が合うたびことごとく無視し続けたドラコと、1時間同じ教室で授業。はたして何事も無く済むだろうか。いや、済まないだろう。確実にドラコはクリスに、もしくはハリーとロンにちょっかいを出してくるはずだ。

 クリスはカップの紅茶を一気に飲み干すと、深くため息をついた。

 しかし、現実とは時に予想以上の結果を生み出す。初めからこんな調子で不安の立ち込めた授業が、まさか自分の好きな教科の2つ目になるなんて、この時のクリスは夢にも思わなかった。
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