第6章 【friend ship】
「いいんだ――それに家を抜きにしたって、私やドラコがとてもいい人間とは言いにくいからな」
クリスがわざとおどけてみせると、ハリーもロンも顔をキョトンとさせ互いの顔を見合わせた。そしてその内どちらからともなく吹き出すと、緊張の糸が切れたように小さな笑い声を上げた。
「クスッ、ハハハ……アハハハ」
「ぷっ、ははっ、ふはははは」
「何だ2人とも、気持ち悪いな」
「いや、だって……君って変な人なんだもん」
ハリーとロンは、今まではクリスを短気で傲慢な扱いにくい人物だと思っていたが、単にそれだけではない事を知って、なんだか少し彼女が好きになれそうだと思った。
そんなクリスも彼らが再び笑ってくれた事に安心し、ホッと肩の力を抜いた。
この11年間、周囲の人間からは「グレイン家の娘」としてしか扱われてこなかったのが、彼らは自分を1人の人間として受け入れてくれる。それがクリスにはとてつもなく嬉しく、そしてありがたかった。
それから3人はろくに会話もなくひたすら笑いあった。といってもそんなに長い間ではなかったが、言葉を交わさなくても顔を見合わせて笑えば、不思議と心が温まってきて、先ほどの湿っぽいやりとりなどすっかり忘れてしまうほどだった。
――だが、そんな余裕を持っていられるのもボートの上だけだった。対岸のホグワーツ城に着いたとき、緊張感の無い笑い声を上げていたのは自分達だけで、周りの皆の顔は青ざめ、不安で体を震わせている人までいるのに気づいた。そして彼らの表情を見てやっと、自分達はまだ「組分け」という重大な試練を終えていないことに気づいた。
「おーし、みんな揃ってるな。そんじゃ、準備はいいな」
「「「――は?えっ?ちょっ……ちょっと待った!」」」
弱冠3名、全く心の準備が出来ていないまま、ハグリットの岩のように大きなこぶしがホグワーツの扉を叩いた。