第6章 【friend ship】
もし度々訪れる来客の質がどんどん落ちているとするなら、もうこれ以上落ちようはないだろう。いや、もしかしたらもっと性質の悪いヤツがいるのかもしれないが、このときのクリスにはこの少年以上に出会いたくない人物なんて想像もつかなかった。
「列車中その噂でもちきりなんだ。それじゃあ、もしかしてあの時の君が――って、クリス!!」
窓際に座って必死に顔を背けているクリスに気づくと、ドラコは遠慮なくコンパートメントの中に入ってきた。
「どうして今朝先に行ったりなんかしたんだ?おかげで僕は今まで君を探し回ってたんだぞ」
「あっそう、私にはハリー・ポッターを探しに来たように聞こえたけどな」
「それは…まあ、その……」
クリスの嫌味に、ドラコはバツが悪そうに口をもごもご動かしただけで言い訳は出来なかった。その一方で、ハリーにしてみれば自分を尋ねてきたはずのこの少年が、なぜか自分を置いてけぼりにしてクリスと話しているのが不思議でしょうがなかった。
「ねえクリス、誰?知り合い?」
「残念ながら、ね」
「残念とは酷い言い草だなクリス、仮にもフィアンセに向かって」
「「フィッ……フィフィフィフィフィアンセェェ!!?」」
「チッ…余計な事を……」
突然飛び出した「フィアンセ」という予想外のセリフに、ハリーとロンはコンパートメント中に反響するほどの大絶叫をかましたあと、呼吸困難の金魚のようにぱくぱくと口を動かした。どうやらあまりの事に言葉が出てこないらしく、クリスとドラコを交互に指差し大きく目を見開いている。
1ヶ月ほど前、同じ状況に陥ったクリスには、彼らの気持ちが手に取るように理解できた。
「ハリー、ロン、勘違いするなよ。これは親が勝手に決めた婚約であって私の意志じゃない。むしろ私はこいつと結婚なんてしないぞ、絶対にだ」
「クリス、僕らが結婚する事は、もう決まった事なんだよ」
「まだ予定だっ。予定は未定であって決定じゃない!!!」