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ハリー・ポッターと小さな召喚士

第5章 【最悪の訪問者】


 実のところ、クリスもレイブンクロー志望なのだ。せいぜい読書ぐらいしか娯楽が無いあの家に住んでいると、自然と本を読み知識もつくので、クリスの頭は悪くないし、むしろ知識だけなら一般の新入生より遥かに多い。ただ興味のあるものにしか力を入れないという性格上、知識にかなりむらがあるだけで。
 あの一言では怒りの収まらないクリスは、その後もブチブチと文句を言い続けた。

「だいたい教科書丸覚えだなんて、一番下らない勉強方法じゃないか!いや、そもそも勉強ともいえないな。知識を己の物とせずただ覚えるだけならサルでも出来る!!」
「よかった、それじゃあクリスも教科書を暗記してないんだね?」
「当たり前だ!それをあの女はさも自慢げに『教科書を暗記したんだけど、それだけで足りるかしらね~?』なんて馬鹿馬鹿しい。あの女にはご希望通りグリフィンドールに行ってもらおう。そうすれば心置きなく私がレイブンクローに行ける」

 一度怒りの炎が付いてしまうと、もう誰も止める事はできない。ハリーとロンは徐々に燃え広がる炎をただ傍観するしかすべは無く、さらに怒り心頭のクリスに同調するかのように、ネサラがせわしなく鳴き声をあげ始め、コンパートメントの中はクリスの怒号とネサラの鳴き声でいちだんと騒がしくなった。

「ああ、お前もそう思うかネサラ。そうだよな、なんでよりによってあんな頭の固そうないけ好かないヤツがマグル出身なんだ。世の中不公平すぎる!」

 だがネサラは、クリスに同調して騒ぎ立てていた訳ではなかった。何時間も前に主人に言われた事を、忘れずに実行していただけのことだった。
 再びノックもなくコンパートメントの扉が開かれると、3人はとっさに顔を向けた。そして入口に立っていた少年の顔を見て、クリスは苦虫を一度に数10匹も噛み潰したような表情を浮かべた。

「ここにハリー・ポッターがいるって聞いたんだけど、本当かい?」
「……うげっ」

 ついに本日7人目にして、最低最悪の来訪者が現れた。勿論それは他の誰でもない、クリスが1ヶ月も前から逃げ回っていた人物。許婚のドラコ・マルフォイだった。
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