第4章 【ハリー・ポッター】
艶っぽくて少しすかした雰囲気がパッと晴れ、どこにでもいる子供らしい満面の笑顔でロンの手をとると、クリスは力の限り大きくロンの手を上下に振り回した。
「うれしい、感動だ!これからも仲良くしよう、ロン!!」
「わ、分かった。分かったから落ち着いて」
「ああっ、すまない。つい興奮して」
言われたとおり手を離すと、クリスは頬をほころばせたままローブのポケットをあさり、そこから小さな巾着を取り出した。緑のベアロ調の布に銀の糸で刺繍がしてあり、見た目も洒落た巾着なのに、クリスが中から取り出したのはなんと古い乾電池が4本きりだった。
「実は私も趣味でマグル製品の収集をしているんだ。これは私が運良く手に入れた宝物でな、家では家族の目が厳しいから集めるのに苦労するんだ。でも何とか説得してマグルのラジオを買わせてやろうとしてるんだが、これが中々上手くいかなくて……。本当はテレビが欲しいところを我慢してラジオと言っているのに。そういえば最近はマグルの子供達の間で“ニンテンドー“というのが流行ってるらしいじゃないか。この前ロンドンの電気屋で――」
もうそこから後は、ハリーもロンも全く聞いていなかった。人形の様に白く端整な顔が、今や頬を紅潮させ目じりはだらしなく下がりっぱなしである。ハリーは、人の印象というのがこうも変われるものなのかと、我が目を疑った。
クリスが自分の世界にいっていることをいい事に、ハリーとロンは小さく耳打ちをしあった。
「クリスって……ちょっと変わってるよね」
「誰もこの見た目からこんな性格が飛び出すとは思わないよ。これならまだ『サタンの呪い』とか言ってる方が想像つく」
のどかな田園風景の広がる緑の道を、ホグワーツ特急が煙を上げながら突き進んでゆく。この事をきっかけに、ガタゴトとゆれるコンパートメントの中に暖かな昼の日差しが入る頃には、3人は良くも悪くも、もうすっかり打ち解けるようになっていた。