第36章 【痣の秘密】
「先生、もう1つだけ聞いてもいいですか。クィレル先生は……やっぱり死んでしまったんですか?」
「クィレルはヴォルデモートにその身を委ねた時から、既に運命は決まっていたようなものじゃ。君が心を痛める必要はない。とにかく今はゆっくり体を休めることだけを考えなさい」
「でも先生……」
「これ以上お喋りをしていたら、今度はわしがマダム・ポンフリーに怒られてしまう。さあ、さあ。わしが怒られぬ内に、頼むから寝ておくれ。お休みクリス」
ダンブルドアは少しおどけてそう言った。
だがクリスにはまだ聞きたいことが沢山あった。どうして父と母の過去について知っているのか、自分たちを助けてくれたのは先生だったのか。それにあの痣が、『闇の印』が赤く浮び上がった時に聞こえてきた声についても、先生の意見を聞いてみたかった。
その心とは裏腹に、クリスの意識はしだいに夢の中へと落ちていった。そして完全に寝入るまで、ダンブルドアはその寝顔を静かに見つめていた。
「もしかすると……いや、考えすぎじゃな……」
回転し過ぎる自分の頭が、時折凄く邪魔になる。だが己の予想も、そういつも当たるわけではない。今回もまた杞憂に終わってくれるだろう。ダンブルドアはそうなるよう祈った。
「ともかく、今はお休み……小さな召喚師よ」
もしも万が一、その予想が当たっていたとしても、今は話すべきではないだろう。ダンブルドアは足音も立てずに窓際へよると、夜空に瞬く幾千の星を見つめた。
もしもあの星の数だけ命があるとするなら、彼の星はどこに向かっているのだろう。淡いブルーの瞳に映る星空では、火星がいつもの輝きを取り戻していた。