第33章 【未来を掴め】
「運が良かったのか悪かったのか……とにかくこれで先にいけるな」
ロンとハリーで慎重に仕掛け扉をあけると、中は井戸のように真っ暗で底が見えなかった。階段もなければ、足場もロープも無い。つまり、落ちろということか。
「レディー・ファーストで行く?」
「冗談じゃない!」
「だよね。じゃ、僕から行くよ。……もし僕が落っこちても合図が無かったら、絶対について来ないで。3人で真っ直ぐふくろう小屋に行って、ダンブルドアに手紙を出すんだ。いいね?」
「了解、そうならないように願ってるぜ」
「ああ。それじゃあ下で会おう」
ロンと軽く拳を突き合わすと、ハリーは仕掛け扉の中へ落ちていった。心配で上から覗いても、真っ暗でハリーの姿は全然見えない。無事なのか、それとも実はこの仕掛け扉自体罠だったのか。不安で心臓が潰れそうになっていると、やっとハリーから合図があった。
「OK!大丈夫みたい、下に何かあるよ!」
ハリーの声は思ったより小さく聞き取りにくかったが、とりあえず無事らしい。3人はホッと胸をなでおろすと、次にロンが穴に手をかけ、降りて行った。そしてハリーの時と同様、ロンも飛び降りてから合図があるまでに普通に考えたよりかなり時間があった。どうやらこの穴はかなり深いらしい。
「……どうする、ハーマイオニー」
「どうするもこうするも無いでしょう」
2人は顔を見合わせた。男の子達ならともかく、こんな深い穴、はっきり言って無事に飛び降りられる自信は無い。2人とも運動神経はかなり駄目な部類に入るのだ。
大きく息を吸い込み、2人はガシッと手を組んだ。こんなに力を込めて互いの手を握ったのは、ハロウィーンのトロール襲撃の時以来だ。
「こうなったら死ぬ時は一緒だぞ、ハーマイオニー!」
「ええ!死んだら2人そろってスネイプの所に化けて出てやりましょう!」
目をつぶり、2人は仕掛け扉の中へ飛び込んだ。湿った空気を切り裂きながら、下へ…下へ…もっと下へ……2人の体は闇の中へ落ちていった。