第4章 【ハリー・ポッター】
「う……わぁ」
教えられたとおり、マグルの所要駅、ロンドンにあるキングズクロス駅の9番線と10番線の境目となる柱をくぐり抜けると、無事に9と3/4番線にたどり着いた。出発時間の4時間も前にホームに入ったと言うのに、すでにプラットホームには「ホグワーツ特急」と書かれた真っ赤な蒸気機関車が停車しており、クリスは思わずその見事な車体にため息をついた。
一人でどこかへ出かける際は、いつも煙突飛行粉を使っていたクリスにとって、これがはじめての汽車旅になる。はやる気持ちを抑え、どこかぎこちない動作で慎重に列車に乗り込むと、適当なコンパートメントに荷物を置いた。
いくら魔法使い御用達の汽車といってもコンパートメント内は別段これと言って変わっているところは無く、3人がけのイスが2つ、窓をはさんで向かい合わせに並び、あとは荷棚があるだけの簡単な造りになっていてクリスはそれが気にいった。乗り物といえば、マルフォイ家の豪華絢爛な馬車か、黒塗りの高級車くらいしか乗った事のないクリスにとっては、このくらい質素な方が逆に新鮮味がある。
使い魔のネサラを狭い鳥かごから出してやった後クリス、は早速窓際の席に座り、スタッフを向かいのイスに立てかけると、自分も壁に頭をもたせ掛け目をつぶった。まだ他の人は誰もいない静かな車内と慣れない早起きのおかげで、今すぐにでも寝入ってしまえそうだった。
「ネサラ……もしドラコが近くに来たら起こせよ。捕まる前に逃げるから」
トランクケースの上に行儀良く座っているネサラが了解といわんばかりに一声啼いたのを聞きとげると、クリスは本当に一瞬のうちに眠りについた。