第30章 【チャーリーからの手紙】
「お帰り、その様子だと上手くいったみたいだな」
「ええ、これでやっと勉強に専念できるわ」
談話室に帰ってきたハーマイオニー達の顔を見て、クリスはやっと進展があったのだと気付いた。この1週間、こんな晴れやかな3人の顔は見たことがない。
「それじゃあハグリッドはやっと森に返す事に納得したんだ」
「ううん、そうじゃなくってもっといい方法を思いついたんだ。ドラゴンの研究をしているロンのお兄さんのチャーリーに頼むんだよ、そうすればノーバートだって喜ぶだろうし」
「ノーバート?」
「ああごめん、ドラゴンの名前だよ」
「ふうん。でも、これで一見落着だな。お疲れ様」
1週間前、カンカンに怒ってドラコの説得から帰って来たクリスが「もう私は手を貸さないぞ」と言い出しても、誰も異を唱えなかった。それどころかみんな見てみぬフリが出来ず、仕方なく手伝っているだけで、出来る事なら自分たちだって辞めたかった。ハグリッドは大切な友達だが、何が悲しくて犯罪の片棒を担がなくてはならないのか。それが皆の正直な感想だった。
だがそれも今日までだ。ロンがチャーリーに手紙を送って、ノーバートを引き取ってもらえば全て方が着く。
「ホントに疲れたよ。君、早めに抜けて正解だったぜ。ノーバートったらもう生まれた時の3倍以上はでかくなってるんだ。手におえないよ、しかも力なんて5倍だぜ」
「……じゃあそんな大きいモノ、どうやって運ぶんだ?まさかふくろう便って事はないよな?」
「さあ?とにかくチャーリーに手紙を出してみなきゃ。それにしてもこの1週間は本当に疲れたよ」
しかし3人の、特にロンの苦労はそれだけでは終わらなかった。次の日から皆ノーバートに餌をやるのを手伝って欲しいとハグリッドに頼まれ、透明マントを使って日替わりで小屋まで手伝いに行くことになった。餌が血とブランデーのミルクからネズミの屍骸の離乳食に変わると、ノーバートはますます大きくなり、そしてますます凶暴に成長していった。
そしてついに事件が起こった。ある晩、ロンが餌やりから帰って来ると、手を血染めのハンカチでグルグルまきにしていた。
「……やられた、あいつに噛まれたよ」