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ハリー・ポッターと小さな召喚士

第28章 【過ぎ去りし平穏の日々】


 それが何なのか、クリスにも分かった。タマゴだ、しかもドラゴンの。真っ黒いドラゴンのタマゴが暖炉の炎の中で温められている。

「すごく高かっただろう?ドラゴンのタマゴなんて簡単に手に入るもんじゃないよ」
「買ったんじゃない、賭けで手に入れたんだ。昨日の晩に町のバーで出会った男とトランプをしてな。そいつは厄介払い出来たと喜んどったよ」
「だけどこんな事して、もしタマゴが孵ったらどうするつもりなの?」
「心配するな、だから図書館から本を借りてきたんだ。ちぃっと古いがなんだって書いてある。ほれ、例えばタマゴを孵す時は母親の息吹を真似て炎の中に置くこと。それから孵ったら、ブランデーと鶏の血を1:1の割合で混ぜたものを30分ごとに飲ませる」
「そういう事じゃなくて、孵ったらどこに置くつもりなのよ!この家は木で出来てるし、それに直ぐに大きくなるわ!あなたよりも!!」

 ハーマイオニーが血相を変えて叫んでも、ハグリッドは「心配するな」と笑っていた。暖炉の中で目覚めの時を今か今かと待ちわびているドラゴンのタマゴを見つめていると、クリスは頭がクラクラしてきた。

「タマゴを見るに、こいつはノルウェー・リッジバックと言う種類でな。またこいつが結構珍しいやつなんだ。もう名前もいくつか考えてあって……ノーバートにしようか、それともジークフリートにしようか――」

 もうこれ以上話しても無駄だと感じた4人は、悦に入っているハグリッドをおいてさっさと小屋を出た。城に戻る途中、振り返って立ち上る暖炉の煙を見ながらロンが一言呟いた。

「……平穏な生活って、どんなのだったけ……」

 その質問に答えられたのは、残念ながら誰一人としていなかった。
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