第22章 【屈辱のクリスマス・パーティ】
「なあ――ドラコ……」
「なんだい?」
「私は、本当に綺麗だと思うか?」
一瞬ドラコは自分の心が読まれたのかと思った。ニコリとも笑わない、無表情なまま見つめるクリスだったが、満面の笑顔よりも、飾らないこの表情の方が彼女の人間離れした美しさをより引き出す事を、既にドラコは知っている。
見慣れたはずの幼馴染相手に、ドラコの心臓は高鳴った。
「ああ、綺麗だよ……とても」
「…そう……」
折角意を決して答えたのに、クリスの反応は淡白だった。それどころか、どこか嫌そうにため息をついて、そのままドラコの脇を通り過ぎた。
その瞬間、ドラコの胸に嫌な予感がよぎった。理由は無いが、このまま彼女がどこか手の届かない所へ行ってしまう、そんな予感が。
「ま、待てっ。どこにいくんだよ!」
「部屋に戻る、疲れた」
背を向けるクリスを引きとめようと手を伸ばしたが、その手は空を掴んだだけで終わった。どうしてだろうか、出来る事なら止めたかったのに。しかしドラコはどうしてもクリスに触れられなかった。触れてしまったら最後、クリスが雪のごとく消えてしまいそうな――そんな悲しい幻覚が、ドラコの瞳に映ったのだった。
「…………ばかばかしい……」
何事も無かったかのように再び雑踏の中に戻るクリスを見送りながら、ドラコはなにも掴めなかった自分の手を、白くなるほど強く、強く握り締めた。