第22章 【屈辱のクリスマス・パーティ】
【第22話】
あれからクリスマスまでの間、クリスの胸中は常に穏やかではなかった。頭の中ではいつもスネイプとグリンゴッツ事件が廻り、出口の見えない不安にため息ばかりついていた。本当に週刊誌に載っていたとおり、事件が「例のあの人」一派の仕業なら、他に協力者がいてもおかしくない。そう例えば――自分の父親とか。
「……まさか、な…――」
クリスは胃に石ころが詰まったように苦しくなり、自分の胸元をぎゅっとにぎりしめた。
ルシウスと父が、当時「例のあの人」の腹心の部下だったというのは知っている。それだけではない、父の知り合いの大半は「例のあの人」側についていた。
勿論本人たちから直接聞かされたわけではないが、周りの態度や、当時の風潮を考えればおおよそ見当はつくし、それは間違っていないだろう。なにせその当時は純血主義でなくとも「例のあの人」側につく人は沢山いたのだ。古くから続く家系の、いわゆる純血主義で「例のあの人」側につかない人間など、数えるほどしかいなかったはずだ。
しかしだからと言って、今回の事件に2人が絡んでいるとは思いたく無かった。世間でどんなに嫌われていようが、クリスにとってはかけがえの無い家族なのだ。
「――そうさ、まさかそんな事あるはずないさ。あれからもう10年以上経ってるんだ。それによくよく考えてみれば、スネイプがクィレルなんかに計画を手伝わせているあたり、他に協力者がいない証拠だ!」
そうは言っても、実際疑惑は白というより灰色気味なのはクリスも十分承知している。だが、疑いたくないという気持ちの方が勝ってしまうのは子供にとってどうしようもない事だった。
そうして心にかすかなわだかまりを残したまま、クリスマスの日を向かえた。この日は朝早くから――といっても、クリスが起きたときはすでに12時を回っていたが――召使が慌しく屋敷中を走り回っていた。
廊下では雑巾がけやモップがけをしている召使と何人もすれ違い、サロンにはテーブルがいくつも並べられ、その上には豪華な花と銀の燭台が飾られている。庭でも昨晩降った雪の影響で、せっかく綺麗に刈り込まれた植木も装飾を施された巨大なモミの木もすっかり雪を被ってしまい、屋敷しもべが数人がかりでせっせと雪かきをしていた。