第21章 【スネイプの秘密】
「いっ、いえ!ただちょっと見ていただけよ」
「そう――あっ、ママが呼んでる――じゃあまたホグワーツで会おう。メリー.クリスマス」
「……メリー・クリスマス」
シェーマスはカウンターの所に立っていた黄土色の髪の女性に駆け寄ると、持っていた雑誌を一緒に店員に渡した。それを見ていた。クリスの脳裏に、再び閃きがはしった。全く最近の自分は、冴え過ぎていて怖いくらいだ。
クリスは雑誌コーナーに急ぐと、並べられた雑誌の中から最新のニュース週刊誌を取った。一心不乱にページをめくるクリスの肩越しに、ハーマイオニーが不安そうに尋ねた。
「どうしたのいきなり、何を調べてるの?」
「さっきの話の続きだ、ハーマイオニー。……あった!」
危険が忍び寄るハリー達の為にも、一刻も早くニコラス・フラメルの正体を暴こうという考えは間違っていたのかもしれない。むしろ何の手がかりもないニコラス・フラメルよりも先に、グレイン家の人間として『こっち』を先に調べるべきだった。
――新たな恐怖!?グリンゴッツ侵入事件――
7月30日に起こったグリンゴッツ謎の侵入事件は、今だ多くの謎を抱えたまま5ヶ月が過ぎようとしている。しかし銀行関係者達は首を揃えて「この事件には関わらない方がいい」と述べるばかりで、相変わらず事件に協力する気は一切感じられない。
この鉄壁のセキュリティを誇るグリンゴッツへの侵入事件は、各国でも波紋をよんでいて、エジプト支部ではさらなる門番の追加と、ドラゴンの導入を訴える声も出ている。また市民の間では、犯人は『名前を言ってはいけないあの人』の一派だとの噂が広まり11年前の恐怖に怯える人も少なくない。不可能と言われたグリンゴッツへの侵入と、関係者の頑なな態度から、たかが噂と無視する事も出来ないだろう
小さくひそめた声で記事を読み上げると、クリスは生唾を飲み込んだ。
「ハーマイオニー、奴は……スネイプが何を企んでいるかは知らないが、あいつは危険すぎる。スネイプは『例のあの人』の手先だったんだ――いや、今でもきっとそうだ」
「まさか、そんなっ……!」
ハーマイオニーはパチンッ、と両手で口を押えると、真っ青になって身をすくめた。しかしそんなハーマイオニーよりも、俯いたクリスの方がもっと、ずっと顔色が悪かった。