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ハリー・ポッターと小さな召喚士

第14章 【波乱の幕開け】


 そのあとの事は良く覚えていない。気が付いたら太った婦人の絵に辿り着き、気が付いたら談話室のソファーに身を沈めていた。ハリーもロンもグレンジャーもネビルも皆、今夜の出来事で相当疲れたのかそれぞれの椅子にぐったりと腰を下ろして、うな垂れたまま誰一人口を開こうとしなかった。

 そんな中でクリスは召喚の杖を見つめ、何か変わった様子は無いか調べていた。談話室に戻ってきた時点ですでに光は消えていたし、特に杖に触れていても特に変化は感じられない。
 もしかしたらあれは見間違いだったのではないかと、だんだん自信がなくなって来た。あの時はかなり混乱していたし、杖にはショールを巻いていたので本当に杖自体が光っているのを目にしたわけではない。もしかしたらルーモスと見間違えた可能性だってある。
 しかしそう思っていながらも、心のどこかでは期待をしている。あの危機的状況の中で一時的に精霊が力を貸してくれようとしたのではないかと。あの追い詰められた精神が、召喚師としての力を引き出したのではないかと。一人前の召喚師として精霊を使役出来るようになるまで、あと1歩なのではないかと。だがそうして期待しながらも、やはり手の中で何の変化も見られない杖にクリスは肩を落とした。

「……あの犬、一体なんだったんだろう」

 談話室に着いてからどれだけ時間が経っただろうか。十分すぎるほど続いた沈黙を一番初めに破ったのはハリーだった。

「何ってケルベロスだろう?」
「じゃあ何でそんなのがこのホグワーツにいるんだよ。あんなデカくて恐ろしいヤツを誰かが飼ってるって言うのか!?」
「知らないよそんなの。ただ分かってるのはあのケルベロスが、ダンブルドア公認でこのホグワーツにいるって事くらいだろ。だからあの廊下には入るなって言っていたんだよ。ひょっとしたら校長のペットなんじゃないか?」

 あんな恐ろしい目にあったというのにまるで他人事のようにサラリと言うクリスに、ロンはやり場の無い苛立ちをぶつける様に声を荒げたが、やはりクリスの返答はどこか真剣味がなかった。クリスとしてはあんな頭が3つある犬ッコロよりも、この2ヶ月で初めて変化を見せた召喚の杖のほうが気がかりだった。だがそう思っているのは勿論クリスだけで、会話を聞いていたグレンジャーが呆れたような口調で口を挟んできた。
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