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ハリー・ポッターと小さな召喚士

第1章 【深窓のご令嬢?】


「いいですかお嬢さま、あなたは――…うわっぷ!!」

 懲りもせずまた説教を始めようとしたチャンドラーの目の前を、開け放した窓から突然入ってきた白い物体がまるで弾丸のように通り過ぎ、それに驚いたチャンドラーはよろけて床に転がった。

 説教を止めてくれた恩人――いや、恩梟は興奮冷めやらぬ様子で部屋の中を2・3回旋回すると、やっとタンスの上に降り立った。

 可哀相に、いくら仕事といえどもこの時期に森に近づくのはかなり危険だ。きっとこの梟もつい先日のクリス達同様、カラスたちの攻撃を受けたに違いない。白に茶色の縞模様のある羽はところどころ抜け落ちて、それでも嘴にはしっかりと手紙が咥えられていた。

「一体どこの梟ですか!?こんな落着きのない!!」
「しょうがない、寧ろあのカラス達の撃退網を潜り抜けてきただけでも称賛ものだよ。でも確かに、どこの子だろうな」

  親子共々、あまり外に知り合いのいないグレイン家に来る梟なんて限られている。でもまあ考えるより差出人の名前を見たほうが早いだろうと、クリスは梟から手紙を受け取ると宛名の面を裏返した。
 
 黄色い羊皮紙で出来た分厚い手紙には差出人の名前はなく、紋章のついた紫色の蝋で閉じられているだけだった。不思議に思いながら封を開け、エメラルドグリーンのインクで書かれた文面を読むと、クリスは思わず頬をゆるめた。

「へぇ……チャンドラー、見てみろ」
 
 まだ恨みがましく梟を睨んでいるしもべ妖精にその手紙を投げてよこすと、チャンドラーはコウモリの様に大きな丸い目玉を、これでもかと言うほど大きく見開いて手紙を見つめた。

「……お、お嬢さま。これは……」
「見ての通り、ホグワーツの入学許可証だ」

 マグルの学校の入学許可書でないのが残念だが、これでやっとこの退屈な生活から抜け出せる。にやける口元を指先で隠しながら、クリスはもう一度手紙を読み返し、あることに気付くと今度は嫌みったらしく端整な唇を持ち上げた。

「買い物が必要だな、チャンドラー。煙突飛行を使うぞ」

 返事を聞く前に、クリスは素早く掛けてあった外用のローブを引っつかむと、ばたばたと駆け足で部屋を飛び出していった。

「はあぁ~…――」

 静かな午後の日差しの差し込む部屋には、年寄りのしもべ妖精の深いため息だけが響いた。
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