第15章 あなたと永遠に……10
「誰から聞いたの?」
「ちょっと……小耳にはさんだんだけど」
「確かに近いうちにいくさになると思うけど、かおるさんが心配する事は何も無い。安心して」
ふっと表情を和らげると頭をポンポンと優しく撫でてくれる佐助くん。
いつもと少しだけ様子がおかしいのは気のせい?
「謙信様もそろそろ部屋に戻っている頃だ。かおるさんがいないのがバレたらきっと怒られると思う」
「部屋に戻るね」
「そうした方がいい」
「うん」
謙信様のために用意したお膳を持って台所を出ようとすると
「かおるさん」
「ん?」
「……1つだけ……聞いてもいいかな?」
「? 私に答える事が出来るなら」
「かおるさんは、現代に戻る気はある?」
「……ごめんね、佐助くん」
佐助くんが忙しい仕事の合間をぬって私が現代に帰れるように研究をしていてくれた事は知っている
でも、私の心は決まっているから
「私は戻らないよ」
「そう言うと思ったよ」
「ごめんなさい。時間を無駄にさせちゃって……」
佐助くんに申し訳なくて顔を見れない私は、俯いてしまうけど佐助くんはいつもの優しい口調で
「気にしなくていいから。時空を超える研究は俺のライフワークだ。
それよりもかおるさんは謙信様と幸せになって」
「うん」
「もうわかっていると思うけど、謙信様の愛情は常人が理解不能なくらいに深い。そんな謙信様だけど、末永く頼むよ」
「うん」
「さ、早く謙信様の所へ」
「ありがとう、佐助くん。またね」
___私が台所を出ていった後、佐助くんが呟いた言葉を私は永遠に知る事はなかった。
「俺にとって運命の人はかおるさんだったんだけどな」