第9章 あなたと永遠に……6
「どうしたの?」
「お前さ暇だろ?」
「え?」
「暇だよな? いや、暇に決まってるよな」
突然どうしたの?
やけに暇を強調してくるんだけど
(まあ、暇ですけど……)
「俺が特別に良い所に連れて行ってやるから、行こうぜ」
屈託のない笑顔の幸村さんに引かれるように差し出された手を取り
「ん?……あれ?」
「あ?」
重ねた手と幸村さんの顔を交互に見比べてしまった。
「なんだよ?」
「……なんでもない。気にしないで……」
全然ドキドキとしない。
私よりもはるかに大きな手
幸村さんが男の人って認識できる手なんだけど、私は特にドキドキもしないし至って冷静。
謙信様に手を握られた時のような感じは一切してこない。
どうして?
やっぱり、私は……
「ほら! 早く行くぞ」
「あ、うん」
幸村さんに手を引かれて廊下にでると
「どこに行くのかな?」
待ち構えていたかのように腕を組んで、壁に寄りかかっている信玄様がいた。
「げえっ」
「おいおい……俺の顔を見た途端に嫌な顔をするなよ」
顔はにこやかなんだけど、幸村さんを見詰める信玄様の瞳は……なんだか怖いような気がしてしまう。
「かおるを連れて行くのは構わないが必要な物を用意していないだろ?」
「ん? なんですか?」
「アレとアレ」
「両方とも信玄様が必要な……」
「幸村! これは命令だ。早急にアレの手配をしろ」
威厳たっぷりな信玄様を見るのは今日が初めて。
(いつもの穏やかな信玄様じゃない)
「先にかおると例の場所に行ってるからな(幸と2人っきりになんかさせるわけないだろう)」
「わかりました(ちっ!せっかくかおると2人っきりで行こうとしてたのによ。邪魔されちまった)」