第25章 あなたと永遠に……17
「気分はどうだ?」
慈愛に満ちた笑みで私を見つめる謙信様。胸が甘く痛みを覚えるのと同時に背中がぞわぞわと虫が這ったように気持ち悪い。
口の中に残る甘い味と少しの鉄の味
謙信様の腕には斬った跡が残っている。
「わた……」
「かおる……苦しむ事はない」
大きな手のひらが頬を包み込む。その手を伝うように私の涙が落ちていく。
「私……」
「かおるを満足させてやる」
「……飲んでしまった……」
「かおる……」
「いゃぁああああ!!!!」
「かおる……落ちつけ」
振り払おうとする手首を強く掴まれ、私が逃がさないようにきつく抱きしめる謙信様。
それでも私は暴れ、謙信様の胸を叩き抵抗をする。
「私っ……私は人間じゃない!!人間じゃなくなってしまった!!!」
人間じゃないよ
だって血を欲していて、ソレを飲んでしまった。
しかも愛する謙信様の血を……
美味しいって飲んだ
霞がかかったような意識の中で鮮明に覚えているあの甘くて惹き付けられる味。
力がみなぎってくる感覚。
やだよ!
私は人間でいたいの。
なのに……どうして?
私は私の中にいるモノに勝てないの?
「どうして?!……ひっく……私は……人間でいたいのに」
「かおる……お前は人間だ」
「人間じゃないっ……人間なら血なんか飲まないよ」
「生きていくために必要ならば問題あるまい」
「だからって!!」
「何が悪い?」
謙信様から穏やかな笑みが消えてなくなっている。
冷たく、最初に会った頃を思いだしてしまう。