第2章 月島夢01
「…何してんの、天崎。そんなとこでぼーっと空なんて見上げちゃって。」
「…うげ、月島。」
私の振り返った先にいたのは同じクラスで、私の天敵の月島蛍。
思わず出た言葉に溜め息をつかれた。
「うげってどうなの、女子として。」
「う、うるさいなぁ。…つ、月島こそ何してんのよ。」
「昇降口にいるんだから帰るに決まってるデショ。部活、休みだからね。………で、まさかとは思うけど、天崎サンは傘を忘れちゃって途方に暮れてるってとこ?」
しっかり図星で、私は黙り込む。
うぅ、何だって月島に見つかるのよ…!
まだ山口君なら良かったのに………と思って気が付いた。
「……そういえば山口君は?いつも一緒だよね?」
「別にそうじゃない日もあるから。それより話逸らすなよ、傘、忘れたの?」
「……………そう、だけど、何よ。」
「ふーん……あれだけ天気予報で言ってたのに忘れるなんて相当なドジだね、天崎って。」
「うぅ……分かってるよ、そんなの!」
だから空を見上げてどうにか止んでくれないかなぁと思ってたのに…!
「あ、因みに今日はこのまま雨止まないらしいよ。ご愁傷様。」
…消えた、私の一縷の望みが………。
しょうがない、濡れて帰ろうかなぁ…でも風邪引くかなぁとがっくりしながら悩んでいると、大きな溜め息が降ってきた。
「……ねぇ、どうしてもって言うなら傘、入れてあげても良いよ。」
「えっ。」
……………これは本当に月島?
そう思って見上げて顔をまじまじと見つめたけれど、目の前の人はやっぱり月島で。
まさか夢でも見てるのかなと自分の頬をつねる。
そんな私を月島は不審そうな顔で見てきた。
「…何してんの?」
「や、つねるとやっぱ痛いなって………一体どういう風の吹き回し?」
「普段いじめてばっかだから偶には優しくしてあげようかなと思ったんだけど…どうも疑われてるみたいだし、帰ろうかなぁ。」
じゃあね、と傘をさして昇降口を出て行こうとした月島の腕を慌てて捕まえる。
こ、こんな意地悪な奴に頭を下げるなんて悔しいけど、背に腹はかえられない…!
「か、傘に入れてください、お願いします……。」
「疑ってごめんなさいは?」
「うっ………疑って、ごめんなさい…。」
「…じゃあ、仕方ないから入れてあげるよ。どうぞ。」