第15章 月島夢06
心臓が、ドキリと痛いくらいに弾んだ。
長く続いたラリー。
ウシワカさんに上がったトス。
ブロックしようと飛んだ蛍くん。
ウシワカさんのスパイクは、蛍くんの手を避けるようなコースでアウトになったように見えて。
だけど蛍くんの手にボールが触れていて………蛍くんはぎゅっと右手を押さえて立っていた。
「…蛍くん……?」
私の呟いた声にすぐ近くにいた仁花ちゃんと明光さんが反応して、2人も蛍くんを見た。
その時には澤村さんや菅原さんが蛍くんに駆け寄っていて、蛍くんはコートの外に出て、『医務室』って言葉が聞こえて、思わず走り出した。
ひどい怪我じゃないよね、あと少しなのに、見たことない顔してた、とか色んなことが頭の中を駆け巡りながらもコートの入口に着くとちょうど蛍くんと清水先輩が出て来たところだった。
「蛍くん!」
「蛍!」
私と後ろから来ていたらしい明光さんが蛍くんを呼ぶと蛍くんは顔をしかめた。
「柚季……兄ちゃんは何で居んだよ…知ってたけど。」
「弟の勇姿見に来たに決まってんだろ!」
明光さんはそう言って蛍くんの様子を見て、少しホッとしたような顔をした。
「……その様子だと死にはしないな。」
「死って何。」
冷静にそう突っ込んでから蛍くんは変に明るい表情になった。
「生きてても肝心なとこで役立たずだけどね。まぁ、でも5セットなんて疲れるし。休めて丁度いいよ、手ぇ痛いけど。」
私も明光さんも清水先輩も仁花ちゃんも、蛍くんが本気で言ってないのがすぐに分かった。
グッと手を押さえて黙り込んだし、私からは蛍くんの悔しそうな顔がちらりと見えたから。
「『俺の仲間はほっといても勝つ!』…そんくらい信じとけばいいんだ。」
明光さんがそう声をかけて、清水先輩も蛍くんに何か言って、それから清水先輩が私を振り返って近くに来た。
「柚季ちゃん、医務室に一緒に行ってあげて。」
「え?」
「私よりも彼女の柚季ちゃんがそばにいてあげた方が良いと思うから。お願いして良い?」
「あ…は、はい!」
急いで蛍くんの隣に行って、蛍くんの顔を見上げる。
「…行こ、早く治療して戻らなきゃ。」
「……ん。」