第14章 烏飼コーチ夢01
「………コーチ、私はまだ子どもに見えますか?」
小首を傾げて聞いてくるその姿は、とても子どもになんて見えなかった。
女っぽい、思わずドキリと心臓が弾むような、そんな姿で俺は慌てて話を誤魔化そうとした。
「………お、前なぁ、大人をあんまりからかうんじゃ…」
「からかってません、本気です。…高校を卒業した時に諦めようとも思いました。だけど大学に行ってもやっぱりコーチより素敵だな良いなって思える人はいなくて……私、烏飼さんが好きです。」
そう言って俯いた天崎の手を少しの沈黙の後、そっと外す。
「っ、烏飼さ……」
「…こっち来い。」
天崎の腕を引っ張って、外から死角になる位置に連れて行く。
それから天崎を抱きしめて…俺は深く溜息をついた。
「……殺し文句だろ、さっきの…俺より良い奴いなかったなんてよ…。」
降参だ、そう呟く。
こんなに綺麗になって、そんな奴に一途に思って貰えてたなんて知って落ちないわけがねぇ。
「あ、あの、それって………。」
「…本当に俺で良いのか?アラサーだぞ?8つくらい年離れてんだぞ?」
駄目押しで天崎の顔を見ながらそう言うと、天崎はすげぇ勢いで頷いた後…泣き出した。
「あ、天崎?!」
「す、すみませ…振られる、かもって思ってたから…。」
「っ、そ、そんな泣くなって…。」
こういう時どうすりゃ良いんだと内心焦りながら天崎の背中をあやすようにトントン叩く。
「う、うぅ…好きです、烏飼さん…大好き……。」
「…おう。」
『俺も好きだ』そう返せるようになんなきゃな、と泣きながら笑顔を浮かべる天崎を見て思った。