第14章 烏飼コーチ夢01
正直、天崎の印象は少し地味な、だけど部員に好かれるマネージャーってくらいだった。
感じが良い奴だなぁとは思ってたが、相手は高校生だ。
何か妙に懐かれてんなとは感じてたが、そう思っていた俺は気付かない振りをして、天崎も特に何も言ってきたりしないまま卒業して東京の大学へ進学して行った。
あの位の年齢は年上が何かよく見えんだろうなぁ、まぁ大学で良い奴を見つけんだろ、と思ったくらいでそれから忙しい日々の中、天崎のことを考えることは無く、俺が烏野高校排球部のコーチになって2年目の夏が来た。
澤村達が卒業して若干戦力は落ちたが、残ったあいつらも充分強い。
また全国へと励むあいつらの手助けをしてやりたいと店番をしながら作戦を考えていると、店の引き戸を開ける音がした。
俺は下を向いたまま「らっしゃーい。」と言う。
だから気付かなかった。
「もう、コーチったらお客さんに対してそんな素っ気ない態度で良いんですか?」
くすくすと笑うその客が天崎だなんて。
声に聞き覚えがあったから顔を上げて、驚いて思わず尋ねる。
「……お前、天崎?」
「はい、お久し振りです。」
…………何故尋ねたか。
俺にとって天崎は少し地味な印象だった、なのに目の前の天崎はそこまで変わった訳じゃねぇのに驚くほど垢抜けて綺麗になっていたからだった。
何だこれ、たった半年位東京にいただけでこんなに変わるもんか?!と驚く。
「な、何か……随分雰囲気変わったなぁ…!」
「そうですか?」
「おぉ!今モテるだろー!」
「いえいえ、そんなこと。……それに、私は好きな人がいますから。」
「へぇ、そうなのか!」
若いなぁ青春てやつだなぁなんて思っていたら伸びてきた天崎の手が俺の服の袖を軽く引っ張る。