第13章 黒尾夢01
画面を見ると『着信 音駒主将 黒尾さん』の文字が出ている。
思わずびくりとしてそのまま固まる。
え、これって確実にメールを見たからだよね?
ていうかこのタイミングでそれ以外はありえないよね?
まさか電話がかかってくるなんて。
驚いて動けずにいると着信が切れて、不在が通知された。
ホッとしていたら今度は即座にメールが来る。
勿論、相手は黒尾さん。
『電話出てよ。ちゃんと話したい。』
それから少ししてまた着信。
…………覚悟を決めて出るしかない。
1回深呼吸をして、応答ボタンを押した。
「………はい。」
『あ、出た!』
「す、すみません、驚いてしまって出れなくて…」
私が正直に言うと、黒尾さんは一拍置いてから真面目な時の声音で尋ねてきた。
『……なぁ、柚季、さっきのメールは本気?』
「…………はい。あの、本当は送るつもり無かったんですけど、気持ちとしては本気、です…。」
『……俺も、柚季のこと好きだよ。』
「えっ」
『あー…やべぇ、大丈夫だって分かっててもスゲー緊張すんね。』
手ぇ震えてる、と黒尾さんが言って、私も自分の手が震えてるのに気付く。
「く、黒尾さんも緊張するんですね…。」
『そりゃするって。………で、メールで読んだけどさ、柚季の口から直接聞きたいんだけど?』
「うっ………い、言わないと駄目、ですか…?」
『うん、聞きたい。』
そう言って無言になる黒尾さん。
待たれてるのが分かって、言わないとと思うけど口が思うように動かないし、心臓がひどくドキドキして苦しい。
「ちょ、ちょっと待ってくださいね………。」
一旦スマホを離し、息を吸って吐いてと繰り返して気持ちを落ち着けてからまたスマホを顔に近付ける。
「…………私、黒尾さんが好きです。」
付き合ってください、と言うと息を飲んだような音が聞こえた。
『……東京と宮城じゃ遠距離だし、俺はまだ部活続けるし受験もある。なかなか会えないけど…それでも良いのか?』
「は、はい、大丈夫です!」
『あー……付き合ってって言うのは俺から言おうと思ってたんだけどなー……まぁ、よろしくな、彼女さん。』
「……はい!!」
嬉しくて大きな声で返事をしたら、電話の向こうから凄く楽しそうな笑い声が聞こえた。