第13章 黒尾夢01
『好きです。』
メール画面にそんな文字を打ち込んでみる。
言葉にするのは凄く難しいのに打ち込むのはこんなにも簡単。
同じくらい簡単に言えたら良いのになと思いながらあて先の名前を眺める。
『音駒主将 黒尾さん』
バレー部の夏の合宿で知り合った、東京の高校の人。
月島くんと同じくらい背が高くて、頭も良くて、なのに梟谷の木兎さんとふざけてはしゃぐような子どもっぽさもある人で…気付いたらそんな黒尾さんを好きになっていた。
メアドは何とか交換出来て、やっぱりメールでも黒尾さんは良いなぁと思える人で。
益々大きくなっているこの気持ちを私は持て余していた。
…………このメールを送ったらどうなるんだろう。
『ごめん』とか『そんな風には見れない』とか、そんな返事が来たらしばらく立ち直れない気がする。
「…………消そ。」
うん、こんなメール送っても黒尾さんを困らせるだけだ、止めよう。
そう思ってキーボードの×印を押したつもりだったのに…すぐ上の送信ボタンにも指が触れてたらしく、画面には送信中の文字。
「え?!ちょ、待って待って!!!」
慌ててスマホの電源を切ろうとしたけど間に合わず…メールは送信されてしまった。
「ど、どうしよう、あ、そうだ、間違えたって言えば……って何と間違えたんだってツッコまれそうだし、あぁもう、どうしよう…!!」
頭の中はもう大パニックだ。
それでも何とか言い訳しようと考えていたらスマホが震えた。