第12章 及川夢01
「よっ!おふたりさん!!な〜んかイイ感じー?」
そう言いながらほぼ体当たりの勢いで2人の間に飛び込むと2人して顔を赤くする。
「なっ、何言ってんだ、ボゲッ!!」
「そ、そうだよ!べ、別にそういう訳じゃ…!」
「いやいや、そんなそっくりな反応しといて何言ってんのさ。それに俺が来るまで完全に2人の世界だったし?及川さん、妬けちゃいましたよ〜!」
冗談めかしながらからかうと、おでこに岩ちゃんのグーが飛んできて。
痛くてうずくまると心配そうな柚季の声。
「と、徹、大丈夫?!何かすごい音したけど…!」
「ううう〜、平気だけど……岩ちゃん、今のかなり本気だったでしょ?!」
顔を上げて涙目で言うと岩ちゃんに怒鳴られた。
「当たり前だ、ボケ及川!…と、ヤベェ柚季、授業遅れるから急げ!」
「え、でも徹………」
「うぅ………俺、次自習だから気にしなくていーよ…岩ちゃんのグーとか頭突き慣れてるし…。」
「…ほんと?」
「ほんと。…………ね、柚季…岩ちゃんもきっと柚季のこと好きだから告ってみたら?」
小さい声でそう言うと柚季は少し驚いた顔をした後、ふわりと笑った。
「…………うん、頑張ってみる。…ちっちゃい頃からありがとね、徹。」
「おい!柚季、走るぞ!」
「え、ひゃっ?!い、岩ちゃん待って…!」
バタバタと2人の足音が遠ざかって行って…………俺はうずくまったまま岩ちゃんに殴られたおでこをおさえる。
「あー……………もう、いったいなぁ…くそぅ……。」
おでこも、それから胸もクソ痛い。
去り際の、柚季の今まで見たこと無かった綺麗な笑顔が胸に突き刺さったみたいだ。
ズキズキ痛む。
痛くて痛くて………ボロボロと涙まで出て来た。
……柚季、柚季、大好きだよ。
でも、きっと岩ちゃんの方が君を大事にしてくれる。
君を守ってくれる。
だから…………どうか、幸せになって。