第10章 赤葦夢01
「なぁ、天崎さん、音駒に転入してこない?」
「…はい?」
びっくりしてタオルを渡そうとした手が固まる。
黒尾さんは何を言ってるんだと顔を見ると、黒尾さんの後ろからリエーフくんも大きく頷く。
「俺も天崎さんに来て欲しい!そんでうちのマネージャーやってくださいよ!」
「いやいや、そんな簡単な話じゃないし、私は梟谷のマネージャーだから。」
「そうだぞ!天崎はやんないぞ!」
木兎さんが私の肩をグッと抱いてきた。
「木兎さん近いです。」
私が肩に乗った手を軽く叩くといてっと言いながら木兎さんが離れて黒尾さんが笑う。
全く、この先輩達は……。
「ちょっと黒尾さん、何で突然そんなこと言い出したんですか。」
「え、ただ単に天崎さんと一緒にいたいなと思ったからだけど?」
…………これは冗談なのか本気なのか。
どうにもこの人の真意は読めない。
「……冗談だと思って良いですか?」
「いやいや、俺かなり本気なんだけど?」
真面目な顔になって私の手を掴んでそう言った黒尾さんに思わず言葉に詰まる。
こういう時に限って木兎さんはあわあわして入って来ないし…!
そう思った時、目の前に誰かが入って来た。
「………冗談でも本気でもどっちでも良いですけど、彼女はうちのマネージャーです。変なことを言って困らせないでください。」
「け………赤葦、」
「天崎、今日はもう戻りなよ、部屋まで送る。」
腕を掴まれてあっという間に体育館の外に連れ出され、早歩きで歩く彼に声をかけた。