第9章 月島夢05
宮城は東北だけあって寒い。
10月になるとジャージを着たい………のに。
「ジャージ忘れちゃったの?」
「…はい………だ、大丈夫です、ちょっとすれば慣れると思いますし…くしゅんっ!」
清水先輩と話しながらもくしゃみが出てしまう。
…寒い。
けど、心配させたくないからあはは、と笑ってごまかす。
「……練習中、誰かに借りておいたらどう?皆貸してくれると思うよ。」
清水先輩がそう言って、皆の方を見る。
…うん、確かに皆優しいし頼んだら貸してくれそうな人ばっかりだ。
「そうですね…頼んでみます。」
誰にしようかなぁ、大きさ的に日向か西谷先輩かな、でも菅原先輩とか澤村先輩も優しく貸してくれそうだなぁとか考えていたら頭の上から何か降って来て目の前が真っ暗になった。
「うわぁ?!な、なに?!」
頭からどかすとそれはジャージの上着で。
「それ、預かっといて。…しょうがないから着てても良いよ。」
そう言ってあっという間にコートの方へ行ってしまったのは月島くんで。
素直な言い方じゃないけど、今のは私に貸してくれるってことなんだろう。
「……まさか月島くんが貸してくれるなんて。」
びっくりしながら私が呟くと、くすくす笑いながら山口くんが横に来た。