第8章 月島夢04
今日は2月14日。
そう、バレンタインデーだ。
例年は義理チョコをあげるくらいであまり縁の無かった私だけど、今年は彼氏が出来たから柄じゃ無いけど手作りチョコなんて物を作ってみた。
チョコなんて溶かして固めれば良いんでしょ、と思ってたけど、これが意外と奥が深くて凝ってしまい…ただのトリュフの予定だった物がホワイトチョコやらストロベリーチョコでコーティングしてあったり、デコレーションしてあったりするような妙に気合いが入ってるように見える代物になってしまった。
…気合いが入ってなかったことも無いけど、何か、それがバレたらと思うと恥ずかしい……。
まさかあいつにこんな物を作るなんてなーと綺麗にラッピングした箱の入ってるバッグをチラリと見る。
あいつ……月島蛍は幼馴染で、小学校の頃から忠と3人で一緒にいた。
何となく同じ高校に入って、何となく2人が入るって言うからバレー部にマネージャーとして入って。
蛍がお兄さんのトラウマを忠の言葉で振っ切って、本気でバレーをやるようになって。
そんな時、蛍から告白された。
『…柚季は僕だけ見てなよ。……………どーせ彼氏とか、いないんデショ?』
と言うのが告白の言葉……だったけど、よく考えたらこれを告白と捉えて良かったんだろうか。
………や、でもちょっと顔赤くなってたしな、蛍。
…まぁ、一言余分だったけど、そう言われて付き合うことになった。
それから頑張る蛍をずっと見てて、時間は過ぎて行き…2月になった。
(さて、一体いつ渡すべきかなぁ……。)
昼休み、は忠がいる。
義理チョコ代わりのクッキーは用意してるし、蛍と付き合ってることを忠は知ってるけどそれでも目の前で渡すのはどうかと思うし……。
じゃあ放課後………も忠がいる。
というかバレー部の面々がいる……うん、無理。恥ずかしい。
帰り道もなー…確実に忠いるよなー……と悩んで机に突っ伏す。
ことごとく忠がいるってどういうことだ、月島蛍。
いや、3人でよく一緒にいるから仕方ないんだけども!
私が悩んで唸っていたら恐る恐ると言った声が近くから聞こえた。
「えーと………柚季、どうしたの?具合悪い、とか?」
忠の声だ。
多分愛想の欠片も無い表情をしてるであろう顔を上げて忠を見る。