第2章 為虎添翼ー1日目ー
「風邪、ひきますよ」
「うひゃ!…大地君、ありがとう」
頭上からの声と、私の肩に黒いジャージが掛けられてハッとする。見上げると大地君がいた。私の変な声にクスクス笑いながらも大地君は隣に座った。
「影山のこと、怒らないでやってくれませんか?」
「…もしかして大地君、見てたんだ」
「見るつもり、なかったんですけど…影山を探してたら」
「そっか。みんなさ、私のことからかってるのかな?」
「…からかってなんかないですよ。ちゃんと本気です、京香さんのこと」
「でも私は歳上で…潔子ちゃんや仁花ちゃんみたいに綺麗でも可愛くも」
「京香さんストップ」
私の話を遮るように唇に人差し指を当てられれば黙る。
何、と大地君を見れば黙った私を満足そうにして口を開いた。
「歳上だって何だって関係ないんです。貴女の姿勢が、声が、笑顔が好きなんですよ。京香さんからしたら俺たちは高校生のガキなんだろうけど、ちゃんと本気です。勿論、俺も」
「…え?」
「あーあ、こんな形で言うつもりなかったんだけどな…」
恥ずかしそうに頭を少し乱暴に掻いた大地君は、真剣な表情で見つめてくる。あ、この目だ…この目に私は囚われて視線を外せなくなる。鼓動が早くなってくるのがわかる、この続きを聞いたらダメって頭ではわかってるのに遮ることが出来ない。
「京香さん。俺も本気で貴女が好きです。俺は頼りないかもしれないけど…京香さんを守りたい。俺のこと、好きにさせてみせます」
「大地、君…」
「困らせるつもりはなかったんですが…俺たちなりにちゃんと本気なので、真剣に考えてくれませんか」
「…わかった、大地君ありがとね。すぐに返事してあげられなくてごめん」
「はは、いつまでも待ってます。それと、昼間言ったこと…出来たらみんなに話してくれませんか」
「私が、抱えていること…?」
「本音を言えば、俺だけに話して欲しいですが…」
「ふはっ、何それ大地君らしくない」
「やっと笑ってくれた…俺だって男ですから、独占欲ありますよ?」
噴き出して笑った私を見て微笑んだ大地君。その言葉に途端に恥ずかしくなって顔を赤くさせる。そして顔を見合わせればクスクスと笑い合う。
「もう遅いし、部屋まで送りますよ」
その言葉に頷いて、私たちは部屋に戻った。