第2章 為虎添翼ー1日目ー
「…い、おい!京香!話聞いてたのか?!」
「うわぁっ!す、すみませんもう一度お願いします!」
「全く…ここ最近ボーッとしすぎだぞ?」
孝支君からの告白があった日以来、如何にもボーッとしてしまってキャプテンにまた怒られてしまった。
あれから何度か時間が出来た時に烏野へ顔を出しているのだが、孝支君の顔をまともに見れないし、目敏い日向君が孝支君って呼んでることに気付いて迫られるし…
「スガさんばっかズルい!俺も!京香さん俺も名前で呼んで!」
なんて大きな声で言うから孝支君にも聞こえたのか、少しムスッとした顔をしながら近付いてくれば、私を日向君から庇うように間に入った。
「日向、京香さん困らせたらダメだべ」
「だってズルいじゃないっすか!なあ影山も思うだろ!」
「あ、あぁ…名前で呼んで…欲しいっす」
孝支君の背中でどんな表情をしているのかはわからないけれど、影山君も巻き込まれたらしい。
初めて会った時とは違いボソボソとした声が聞こえるも、しっかりと言葉は私に届いた。
別に名前で呼ぶくらいならいつだって…
「ほらお前ら練習するぞ?スガも…独り占めはよくない、よな」
その様子を見かねた澤村君が此方にきたらしい。
相変わらず姿を見ることが出来ないが。
孝支君の肩に手を置けば耳元で何やら言っていたのだが最後の方は聞き取れなかった。
「京香さん、よければ俺たちみんなのこと名前で呼んでくれませんか?」
「ん?うん大丈夫だよ。流石だね、大地君」
「っ…!ほ、ほら始めるぞ!」
孝支君の肩から澤…大地君の顔が見えて、その提案に頷けば大地君の主将っぷりに感心した。
早速名前で呼んで、微笑むと大地君は少し固まった後顔を赤くさせ、それを片手で隠すようにすれば練習へと戻っていった。
大地君も純情男子か…!
翔陽君と飛雄君も顔を綻ばせながら練習に戻っていく。
孝支君だけは、複雑な表情をしていた。
声をかけようかと思ったが、下手に声をかけて彼に期待を持たせるようなことは出来ないと思いとどまった。
「京香さん大変ですね。何かされたら私、助けに行くから」
「き、潔子ちゃん…!」
いつの間にか隣にいた潔子ちゃん。
思わず顔を赤くさせて狼狽えれば笑われてしまった。
真剣な表情とは裏腹に楽しんでない?!