第1章 合縁奇縁
「あーあ、もう駅着いたのか…」
「ふふ、たくさん話して楽しかったね。わざわざ送ってくれてありがとう菅原君モテるでしょ」
「俺も楽しかったです。そんなモテないですよ!それに…気になってる人にしかこんなことしないし…」
「ん…?」
無事に駅まで着けば、残念そうな表情を浮かべた菅原君が可愛くて思わず笑ってしまう。私がからかうと拗ねたような表情になって否定してからまたボソボソと何かを言った。
聞き取れなくて、首を傾げると顔を上げた菅原君が近付いてきて。
ふわっと包まれる感覚があれば、目の前には彼のTシャツ。
あれ、デジャビュ?
…て、私菅原君に抱き締められてる?!
「ちょ、菅原く…」
「少しだけ、このままで居させて下さい…俺さっき…京香さんが大地に抱き締められてるの見て、凄い苦しくなって…二人とも顔赤くさせるし。それで気付いたんです、俺…京香さんが好きです」
「え、えっ…あの、菅原君」
「返事はまだ要りません。俺、京香さんに好きになってもらえるように頑張りますから…だから俺のこと見てて下さい。あ、一つだけお願いがあるんですけど」
「…お願い?」
いきなりの告白にドキドキ煩い心臓に気付かないフリをしながら、お願いという言葉にきょとんとする。
すると、彼の顔が私の顔の横にきて、耳元に唇を寄せればわざとなのか低めの男の声で彼は囁いてきた。
「俺のこと、菅原君じゃなくて孝支って呼んで…?」
「っ…こ、孝支…君」
その甘い囁きに身体をビクッとさせて、たちまち耳まで真っ赤になる。
私が素直に菅原…じゃなかった孝支君と呼べば、満足そうにいつもの優しい笑みで笑うのが見えて安心した。
「俺誰にも負けないから…必ず振り向かせてみせるべ。期待してて下さいね。また烏野来てくれるの楽しみにしてます!気を付けて!」
「あ!菅…孝支君も!ありがとう!」
パッと私のことを離せば、言いたいことだけ言って走って帰ってしまう孝支君。その後ろ姿にお礼を言って手を振れば、彼が見えなくなるまでそこから動けずにいた。
こ、高校生から告白され、た、んだよね私…
気を緩めれば力が抜けてしまいそうな感覚になりながらも、熱い顔を冷ましながら家へと向かった。
その間ずっと頭の中では孝支君のことばかり考えてしまうのは見事に彼の策略に陥ったからだろうか……