第1章 合縁奇縁
ある土曜日、私―真澄京香は久しぶりに母校である白鳥沢学園へと来ていた。
大学2年となった今でも私はバレーと関わっている。
高校時代からバレー部に関わっていて、選手たちを傍で支えるマネージャーという仕事が好きだ。もちろんバレー自体も。
ここに呼ばれたのは、白鳥沢学園の高校生との練習試合。怪物エース様がいるせいで今の高校生では相手にならないらしい。
というわけで私たち大学のバレー部に声がかかったのである。
今は全員ロードワーク中。その間にスクイズを洗ってドリンクを作ったり、タオルを用意したり。マネージャーは私しか居ないため一人でそれをこなしている。めんどくさいけどやりがいがあると私は思う。
「よっし、準備出来た!」
全員分の用意が出来たと一息ついた時、数人の足音と共に体育館の扉が開いた。
「みんなお疲れードリンクとタオルあるからねー」
ロードワークから帰ってきたのだろう、息を切らしている大学生に続いて高校生も帰ってくる。ひとりひとりにお疲れ様と声をかけながらドリンクとタオルを渡していると、ふと見知った人物が居ないことに気づいた。
「あれ、覚ー若利は?」
「んー?若利君なら俺らより長距離行ってるんで、もうすぐ帰ってくるんじゃないですかネ」
「長距離って・・・わかったありがとう。ちゃんと休んで」
ういっす~。なんとも気が抜けるような返事をした天童覚を横目に、ため息をつく。
あいつ帰ってきたら一言いってやらないと!
飲み終わったスクイズを受け取りながら、私は幼馴染の牛島若利のことを考える。
小さい頃からバレーが上手だった。世間が言うとおり天才なのだろう。
ふと体育館の入り口に目を向ければ、若利の姿がある。ロードワークもほどほどにしろと怒りに行こうと思い体育館の入り口へと歩を進める。
近くまでくれば何やら話し声が聞こえてきたのがわかった。
ただの興味本位。こっそりと近くのドアから顔だけひょっこりと覗かせれば私は聞き耳を立てた。