第5章 共同戦線ー4日目ー
「おーい!及川たち!打ち上げやるべー」
「打ち上げ?!」
「今行く!よし、京香ちゃんこっち!」
ブンブンと手を振りながら呼んでくれた孝支君。打ち上げ花火も用意してくれていることにビックリしていれば、徹君に手を取られて引っ張られるままに呼ばれた方へ。
小さめだがちゃんとした打ち上げ花火が幾つか用意されていた。
「俺が手持ち花火だけで終わらせると思ってるの?」
私が並んでいる打ち上げ花火に感心した声をあげれば、隣の徹君は得意げに笑った。置いてかれた飛雄君も合流して反対側に立った。
「まあ、高校生が買えるようなディスカウントストアの打ち上げ花火だからしょぼいけど…」
「あそこのディスカウントストアで買って来いって言ったの及川さんじゃないっすか」
「ふふ、まあまあ。2人ともありがとう。しょぼくたって何だって打ち上げ花火は打ち上げ花火だから。着火は…溝口さんがやってくれるのね」
隣にきた飛雄君を軽く睨みつつも、チクチクと嫌味を言う徹君に反撃とばかりに眉間に皺を寄せた飛雄君が食ってかかる。
だから私を挟んでの言い合いは止めてくれ…
両サイドの2人を宥めながら、ライターで着火しようとしている溝口さんを見つめる。
ヒューっという音がしてそれを辿るように空へと視線を向けると、パンッと何とも軽い音と共に夜空に小さな打ち上げ花火が咲いた。
「ちょっと、いくらなんでもしょぼすぎない?」
「…っすね」
「あはは、良いじゃんこういうの。何か高校生っぽい!」
忽ち怪訝そうな顔になった徹君。珍しく飛雄君も同意見らしい。
2人とも不服そうだけど、この小さな花火が発展途上のみんなのようで私は好きだ。これから色んなことを経験して、大きな花火のように立派なものになっていく…彼らだけではなくて、私も。
「京香ちゃんが良いって言うなら良いか…溝口クン!早く次次!」
私の方を見て、何度か頷いた徹君。着火役の溝口さんを急かすように言えば、それを煽るように龍之介君たちが騒ぎ出す。
大地君や力君が止めようとするも、武田先生から今だけはやらせてあげましょうと言われて心配そうに見つめている。
翔陽君はすっかり金田一君と仲良くなったようで、花火が上がる度に「うおおお!」と感動の声をあげていて。
こうして、マネージャー慰労会という名の交流会は無事に幕を閉じた。