第5章 共同戦線ー4日目ー
「京香さん。そろそろ病院に向かいましょう」
「ん…ふぁ。あ、私寝ちゃって…はい、お願いします」
「ゆっくりで大丈夫ですよ。起き上がってフラつきはありませんか?」
「…ええ、大丈夫そうです」
私が起こされて目を開けると、目の前には武田先生。
欠伸を手で隠しながらもゆっくりと起き上がれば、頭にフラつきがないのを確認して頷く。それを見て、武田先生も安心したように微笑んでくれた。
私のペースに合わせて二人で歩き、武田先生の車が停めてある駐車場へ。静かな校舎の一角、体育館だけが部員たちの声で賑わっていた。自然と目線は其方の方へ向けられる。
「今はどこも異常がないことを確認することが優先です。その後で、とことん彼らに付き合ってあげて下さい」
武田先生には私の気持ちがわかってしまうのか。諭されるように言った武田先生の言葉に驚きながらも素直に頷いた。
車まで着けば、まるでお姫様扱い。助手席のドアを開けてくれた武田さんは、綺麗じゃなくて申し訳ないのですが。と眉を下げながらも丁寧にエスコートをしてくれて。
照れ臭いような恥ずかしいような、そんな感じになればはにかみ、お邪魔しますと言いながら乗り込んだ。
パタンと静かにドアが閉まり、武田先生が運転席に乗り込めば、妙に緊張してしまう。シートベルトをきっちりとすれば、自然と手は膝の上に。
「そこまで緊張しないで下さい。安全運転で向かいますから」
「はい、お願いします」
小さく笑った武田先生は、私の緊張を解そうとしてくれているのか柔らかい笑みを浮かべてくれたので私も頷いて微笑んだ。
車がゆっくりと動き始めれば、向かったのは大学病院。
「京香さん、何か悩んでいることでもありますか?」
「えっ」
いきなり投げかけられた質問にビックリすれば言葉につまる。それを肯定の意味に捉えられれば、やはりと小さく溢した武田先生。
「あの子たちのこと、ですよね」
そう続けられた言葉に、私は素直に頷くことも出来なくてただ俯いた。視線は前へと向けられたままであるが、核心を突く言葉に何て答えればいいのかと私は必死に言葉を探していた。