第4章 磨斧作針ー3日目ー
「ごめんね、醜態晒しちゃって恥ずかしい…」
「俺の方こそすみません」
「一君が謝ることないよ!本当助かったんだから、ありがとう」
練習している部員たちから少し離れた一君。私も後について少し離れたところで話す。やはりお互いに気まずいのかぎこちない。
「あの、お詫びと言っては何だけど…一君のサーブ見せてもらえない?」
烏野のみんなみたいに、私で良ければ君の力になりたい。と伝えれば少し驚いたような顔をした。差し出がましいかな、と苦笑すれば慌てて横に振られた頭。その反応に安心して微笑む。
「俺にも、良いんすか。烏野苦しめることになりますよ?」
「…私は烏野のコーチだけど元白鳥沢だし。今は青城のマネ。みんな一生懸命やってるもの。その手助けがしたいの」
個人を応援することは出来るから、と微笑めばそれならばお願いしますと言ってくれた一君。任せて!と嬉しくなり2人でサーブ練習している中に入れば、深く息を吐いた一君の表情はガラッと変わった。
放たれたジャンプサーブはとても安定していて、威力も申し分ない。私が彼にしてあげられることは何かあるのだろうか、と考えれば打つ際の身体が少し気になった。
「一君、トス少し低いかも。ジャンプ力あるんだからもっと反動つけたサーブはどう?スパイク打つみたいに踏み込むの」
「スパイクみたいにっすか」
「そうそう、ちょっとやってみよう!」
トスの高さをこのくらいにして…
一君の横に立ってどのようにしたらもっと威力が上がるのか、2人で話し合いながら何度もサーブを打つ。段々と他の部員たちが自主練を切り上げていくが、私たちは納得出来るサーブが打てるまで何度も続けた。
一君は体力が凄くあるらしい。息はあがっているものの、未だにサーブの威力は落ちてない。私は途中で疲れて、現在はステージの上に座って一君を見守っているのだが。
「京香さんは大学卒業したらどうするんすか」
「ん?大学卒業したらかー。ゆくゆくは全日本バレーのトレーナーになりたいかな」
「全日本バレーのトレーナー…」
「うんそう、なれるかはわかんないけど。バレーから離れたくないし、有望な選手身近にたくさんいるもの。みんなを支えたい、みんなと一緒に頑張りたい。それが今の私の夢」