第4章 磨斧作針ー3日目ー
「京香さんまさかその状態でここまで来たの?」
「ん?そうだけど…」
「そう、流石岩泉ね。本当、及川とか影山じゃなくて安心した」
「潔子ちゃんどういう…ん?!」
昨日、部屋の中に入った後に潔子ちゃんから問い詰められてお風呂で濡れたことから孝支君に送ってもらったことまでを白状した。勿論、孝支君から改めて告白されたことやキスされたことは話してないけれど。
その時に妙に納得したような潔子ちゃんに首を傾げれば、スッと差し出された鏡を見て思わず固まってしまった。
一君から借りたジャージを脱いだ私の姿はTシャツが濡れている為下着が透けていたのだ。その事実がわかり、恥ずかしさに顔を赤くさせれば隠すようにまたジャージを羽織った。
そうだよね、普通に考えて服が濡れれば透けるよね。何を考えてたんだ私は…いや何も考えてなかったんだな。あぁ一君に醜態晒したことを謝らなきゃいけないし、ちゃんとお礼しないと。一君が顔真っ赤になった理由はこれか。てか一静君も気付いたってことだよね。…どんな顔して会えば良いんだ…
「…さん!京香さん!」
「ひゃいっ」
「大丈夫?とりあえず風邪引く前にお風呂行きましょう」
「あ、そうだね。うん行こうか」
潔子ちゃんと仁花ちゃんが心配そうにしてくれているのがまた申し訳なくて。まだ見られたのが一君だけだからってポジティブに考えれば頷いてそのままの格好で2人とお風呂へ向かった。
ーーそれが部屋に戻ってからの出来事。
翌朝、時間通りに起きれば2人と共に食堂に下りた。
今日は一君のジャージのこともあるし、私が洗濯物干してくると言えば浴室で手洗いしたジャージを取ってから合宿所の横へ。
洗濯機を回した後で外に出てみればポカポカした陽気に気分が良くなる。一番日当たりの良い場所にジャージを皺がないように干した。
「あ、京香さん。おはざっす」
「ん?飛雄君、おはよう。今日もロードワーク行ってきたの?」
「うっす。…青城のジャージ?」
「あ、あぁこれね。ちょっと昨日私が借りたから洗って干したの」
「…借りたんすか。誰に」
ロードワークを終えて戻ってきたらしい飛雄君。
私が借りたと口を滑らすと眉間に皺が刻まれた。
まずい!と思ったが時既に遅し。不機嫌なオーラを纏った彼は、ゆっくりと距離を詰めてくる。